2004年10月17日

著作権法改正要望パブリックコメント提出運動について

 現在、日本の著作権法は未曾有の危機的状況に晒されています。この機会に、1人でも多くの人が意見を提出して「国民的議論」を巻き起こさなければ、今まで以上にごく少人数の関係者が自分たちの都合だけで決めた理不尽で身勝手なルールを強制することになってしまうのは確実なのです。
 2002〜2003年度における文化審議会著作権分科会法制問題小委員会が権利者代表に牛耳られてしまった為に到底「まともな議論の場」とは言えず、むしろ「利権漁りの場」に成り下がっていたことは昨年12月8日の第11回分科会で出席者から

 先週のレコード協会との意見交換会では、消費者団体より「レコード業界は再販の優等生と思っていたが、今回のことで裏切られた思いだ」という発言があった。最近「自分も消費者だが、消費者としても良いと思う」と発言する権利者側の委員が最近目につくが、これは例えれば電気料金の審議会で電力会社の社長が「自分も家庭では消費者だが、料金の値上げはよいと思う」と主張しているようなものである。お互いに肩書きを持って、それぞれの立場を基本に参加しているのであって、審議会で意味をなさない発言はやめてほしい。

と言う批判の声が挙がっていることからも明らかと言わざるを得ません。先の第159通常国会でもこうした問題点が指摘され、本年度からは2001年度の総括小委員会に近い学識経験者中心の編成に戻されましたが、当の文化庁の姿勢に変化が見られるかどうかは依然、不透明であるばかりか文化庁が8月末まで約400の団体に対して行っていた意見照会では依然、著作権強化を求める声が主流であると伝えられます。そもそも、この意見照会では権利の制限を要望する際に理由を明記するよう求めていたにも関わらず、権利の創設・強化ないし権利制限の廃止を要望する際は理由を明記せずとも良いことになっており、利用者側が権利の制限ないし現行制度の維持を要望する際に不利な形での意見聴取が進められていたものと評価せざるを得ません。
 その背景には、政府の「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」が原初の段階(2003年7月8日公表)に於いて「著作権者の気に入らないことは何でも禁止出来るようにする」ことを前提にしているとしか評し得ない無軌道なプロコピーライト路線を打ち出していたことが有ります。先の通常国会で成立した著作権法改定案に於ける「輸入権」及び「出版物に対する貸与権適用除外廃止」はこの推進計画に基づいて国会へ提出されたものですが、このうち輸入権に関しては両論併記に続けて「引き続き慎重な検討を要する」と分科会報告書に記載されていたにも関わらず文化庁及び知的財産戦略推進事務局は法案提出を強行したと言う経緯はよく知られている通りです。
 なお、原初の推進計画に関してはその成立過程が非常に不透明であり、2003年4月に知的財産戦略本部が発足してから本部会合や調査会で計画に盛り込むべき事項に関して広範かつ徹底した議論が行われた形跡が無いばかりか原案公表からわずか1週間、ほとんど誰も実施していることに気付かなかったパブリックコメントを経て決定されています。
 このことに対して、日本に於ける知的財産法学の第一人者である中山信弘・東京大学大学院法学政治学研究課教授は昨年12月17日の第6回本部会合に於いて、事務局の姿勢を激しく糾弾しています。

今日はちょっと違うことですけれども、事務局の在り方について、余りにも独善的であるので、ちょっと異議を申し述べたいと思います。
 私は本部員として、専門調査会でメンバーである必要はないのですが、オブザーバーとして意見を述べたいと申し上げておりましたけれども、一切拒否されております。その理由は官邸の意向であるということでございます。私、まさか総理の意向であるとは考えていないんですけれども、いずれにいたしましても、事務局にはまともに議論をしようという真摯な態度がどうも私には感じられません。したがって、この報告書には私の意見は反映されておりません。こういうことでは、私は本部員を続けている意義はないと考えております。

(中略)
仮に今の改革ができたといたしましても、現実に裁判等々を運営していく知財の専門家から、これほどまでの怨嗟の的になっていて、果たして実効性のある改革ができるかという点を私は非常に危惧しております。
 5月にこの本部会でも申し上げましたけれども、事務局はあくまでも本部の事務局でありまして、事務局自体が特定の見解、特定の案に固執するとか、特定の本部員を排除して、政治家や財界のトップと話しをつけて決着をするというたぐいのものではないと私は考えております。 時間の関係でこれ以上詳しいことは申し上げませんけれども、とにかく急ぐだけが能ではないわけでありまして、各界に十分議論をする機会と時間というものを与えてほしいと思います。
 私にとって、先ほど言いましたように発言の機会は今日しかないわけであります。したがいまして、私としていたしましては、重大な決意を持って申し上げているわけでありまして、総理としても、重みを持って受け止めてもらえれば幸いでございます。


 この後、国会で審議中であった著作権法改定案に対する反対の声が拡大する中で昨年5月に推進計画は改訂され、原初計画へのアンチテーゼとも言うべき「権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する」項目が追加されましたが、だからと言って「著作権者の気に入らないことは何でも禁止出来るようにする」ことを前提にした原初計画に於けるの諸々の項目が削減された訳ではなく(事務局は削減に否定的)、現行の計画は非常に不安定な状態にあると言えます。中山教授は本年5月27日の本部会合に於いて、この点に関して

外部から見ますと、場合によっては知的財産に関係ない事項も含めて、単に各界の要望をまとめただけじゃないかという批判がないとは限らないというふうに思えるわけであります。
(中略)
 現在、世界を見渡しましても、知的財産制度の強化一本やりという国はないわけであります。知的財産制度と言えどもいろいろな要素が複雑に絡み合っておりまして、例えば模倣品対策のように、迅速かつ強力に直ちに実施をしなければならないという問題もございますし、逆に例えばソフトウェアのように、権利を弱めた方が、あるいは権利がない方が産業・文化の発展に役に立つという場合すらあるわけであります。
(中略)
権利を強化すべきものもあるし、あるいは権利を制限すべきものもあるということになるわけであります。いかにしたら産業、あるいは文化の発展に益するかという観点から、徹底した検証、検討というものが必要になってくるだろうと思います。

と指摘し、本年8月2日の第13回文化審議会著作権分科会では

資料6の検討事項例ですけれども,これは例であって,今,著作権課長がおっしゃいましたように,最後に「等」と書いてありますので,それで結構だと思いますが,特に法制問題小委員会の検討事項には知財推進計画2004の記載事項と書いてあります。この知財推進計画2004には,全部が著作権ではないんですけれども,404項目ありまして,これは,知財本部の本部員等が出した要望,例えばレコードをこうしてほしいとか,書籍をこうしてほしいとかいう要望を取りまとめたら400になったということでございます。もっとはっきり言ってしまうと,著作権法を体系的に検討をして,そこから問題を洗い出すという作業は,本部ではしておりません。したがいまして,2004に書いてなくても,やはりこれは体系的な検討も忘れずに,2004に書いてないようなことでも重要なことがあり得るということを留意していただきたいと思います。

と述べており「推進計画(の著作権に関連する部分)に記載されているのは、産業界の要望を実現性の高低に関わらず列挙しただけのもの」であると言う見解を表明しています。とは言え、不透明な成立過程を経て公表された原初計画の記載事項を産業界が金科玉条に祭り上げてその実現に血道を上げるのは必然であり、いくら法制問題小委員会が学識経験者中心の客観的議論の場になったとは言え、輸入権の時と同様ないしそれ以上のゴリ押しを排除する担保が無い以上は1人でも多く数少ない機会を捉え、声を挙げるしか輸入権に始まる、或いはもっと昔から続いているかも知れない「連戦連敗」を食い止め、著作権法第1条に謳われる「文化の発展に寄与」する為の改正を勝ち取る方法は無いのです。その為には、昨年12月に文化庁が実施したパブリックコメントで輸入権に反対した293(文化庁集計による)、或いは今年4月から5月にかけて知的財産戦略本部が実施したパブリックコメントに於ける301(寄せられた全意見のおよそ8割)と言う数では「文化の発展に寄与」する為の改正を勝ち取るにはほど遠く、より多くの産業界による強大な組織票を凌駕するだけの声を絶対に集めなければなりません。具体的な目標数値は「2万5000〜3万」です。
 2ヶ月で6万近くの「輸入権反対」の署名を集めたことを思い起こしてください。3万は、決して不可能な数字ではないはずです。著作権は日本国内に居住する全員の問題であるにも関わらず、これまではごく小人数の間でしか議論されて来ませんでした。
 今回の運動は、輸入権反対運動を通じて確実に向上したひとりひとりの知的財産意識が本物かどうかの「試金石」である文化庁のパブリックコメントに対して1人でも多くの意見を提出し、著作権法第1条に謳われる「文化の発展に寄与」する為の改正を勝ち取ることを目的にしています。期間限定ではありますが、どうか「3万人」の目標実現に向けてご協力、激励をいただければ幸いです。


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