2004年10月17日

パブリックコメント提出運動の目的

 この運動について、「どんな行動を起こすのか」や「具体的に何を要望するのか」のイメージが現段階では不明瞭であると言う難点があります。しかし、これまでと同じように「ごく少数の、利権拡大を目論む勢力による根回しだけで著作権の将来が決められるやり方を今後も維持するのが良いことだとは絶対に思わない」と言う点に関しては、多くの方にご賛同いただける点ではないかと確信しています。
 また、今回の運動は必ずしも特定の要望を通す為のものではなく、輸入権反対運動を通じて確実に向上したであろう「知的財産意識」が本物であるかどうかの試金石であるパブリックコメントを通じて産業界、或いは文化庁に「今までと同じやり方は通じない」と言うメッセージを送ることこそが重要であると考えています。それに、輸入権反対運動を取ってもその反対理由は様々であり自由貿易を推進する立場から反対する者在り、消費者利益の侵害を理由に反対する者在り、CCCD回避の手段を封じられるから反対する者在り……と多種多様でした。筆者はまだ「逆輸入(還流)盤」のみが対象だと思われていた頃からほとんど孤立無援に近い状態で反対の声を挙げ「自由貿易推進」と「消費者利益侵害」を主張する普段は全く相容れない立場の勢力に狭まれ、相当に神経を磨り減らす調整に当たったりしていました。そもそも、この悪法案をゴリ押しした文化庁なりレコード協会には「どうせ消費者団体“ぐらい”しか反対しないだろ」と言う非常に脳天気な読みが有ったようで、5月20日のJ-WAVE「JAM THE WORLD」に出演した生野秀年・RIAJ常務理事(当時、事務局長)が参院通過後に勃発した世論の猛反対を「予想されておりませんでした」と述べたあたりは非常に象徴的であると言えましょう。

 そもそも、政府の知財推進計画と言うのは一方で「国民の知的財産意識向上」を謳いながら実際には「国民の知的財産意識が低い方が、波風立たずに実行しやすい」ものばかりだったりします。要するに、推進計画の「知的財産意識向上」は正確な表現ではなくその真意は「産業界の都合で政府が押し付ける知的財産政策に従順な国民を養成する」ことにあるとしか思えません。岡本薫・前著作権課長(現・文部科学省スポーツ青少年局企画体育課長)がよく「一億総クリエイター・一億総ユーザー」と言う表現を用い、先の衆議院文部科学委員会の附帯決議にもこの表現が盛り込まれましたが、原初(2003年7月8日公表)の知財推進計画と言うのは到底「一億総クリエイター・一億総ユーザー」時代に即したものではなく、中世暗黒時代のような「ごく少数の富裕層が文化・芸術を独占し、一般庶民はその所産を全く享受する機会が無いか高いお金を払ってそれを有り難く拝ませてもらう」ようなイメージに立脚した代物だけに、事務局の偏向的かつ不真面目な姿勢を糾弾した中山先生のご尽力で(恐らく、フェアユース規定創設を念頭に置いて)「権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する」項目が追加されたぐらいではまだまだ「一億総クリエイター・一億総ユーザー」時代に即した政策の実現にはほど遠いと言わざるを得ません。何より、現在の政府による知財戦略はクリエイターと言うよりもレコード会社や出版社、ゲームメーカーと言ったコンテンツ・プロバイダーの儲けばかりが重視されていることが否めず、より多くの優れた作品を生み出すために不可欠な「作品に接する機会」の拡大には全く興味が無い、どころか有害ですらあると認識されている節が見受けられます。もっとも、意外に思われる方もいそうですがゴリゴリの権利強化を主張するばかりであるコンテンツ・プロバイダー側に必ずしも明確なビジョンが有る訳ではなく、むしろ国内外(音楽業界が輸入権をゴリ押しする口実にしていたアジア市場も3年連続の縮小)で市場規模が頭打ちになっている現実を直視せずに、音楽業界ならば「CCCDでナントカなるか」「輸入権でナントカなるか」と当座の1〜2年を凌ぐ為だけの実に場当たり的な方策ばかりを採り続け、それが国内市場の不興を買うと言う悪循環に陥っていると言う現実があります。そして、音楽業界は輸入権反対運動に直面して初めて「自分たちが世間から反感を抱かれている」ことに気付いたのではないかと思うのです。
 結局のところ、そんな1〜2年を凌ぐためだけの場当たり的な発想に任せて、公共事業のように予算を付ける必要が無いからと言って安易にホイホイと権利が与えられ、結果的に市場から創意工夫をこらす力を奪ってしまう負のスパイラルから彼等を救い出さなければ、世界に誇るべき日本の文化は間違い無く滅びるでしょう。世界で最も多様な音楽に接することの出来る環境を護りたかったからこそ、あれだけ多くのアーティストや音楽評論家が声を大にして輸入権に反対したのです。誰しも好き好んでクリエイターと、或いはコンテンツ・プロバイダーと敵対したいなどとは思いません。しかし、哀しいことに彼等の多くは何か悪い薬でも飲んで浮かれ狂っているかのような「知財ブーム」に煽られて“従順でない”著作物利用者を敵視しているのです。

 意見を提出するにしても、理由は様々だと思います。むしろ、それぞれに動機が有ることこそが自然だと思います(強いて「共通課題」を掲げるとするならば「フェアユース概念の獲得」でしょうか)。
  半月後の募集開始に向けてまだまだ課題は山積していますが、6月3日の悔しさをそのままで終わらせない為に、或いは現在の、そして将来のクリエイターを含む著作物利用者の為に、力を合わせて頑張りましょう。


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