3分間でわかる「フェアユース規定」が必要な理由: 知的財産推進計画改訂のパブリックコメントを提出する

<< CCCDは失敗だったのに──狭められる「私的複製」の範囲 | TOP | 「永遠-1日」がいい?──延長され続ける著作権 >>

2005年01月24日

3分間でわかる「フェアユース規定」が必要な理由

　このトピックで提起されている内容に対する意見は以下の宛先へ。

〒100-8959（住所不要）　文化庁長官官房著作権課御中 ※クリックでメーラー起動
TEL:(03)5253-4111(文部科学省代表)
FAX:(03)6734-3813

〒100-6011（住所不要）　知的財産戦略推進事務局御中 ※クリックでメール送信フォームへ
TEL:(03)3539-1836
FAX:(03)3502-0087

　欧米で大好評を博している音楽配信サービス「iTunes Music Store」が日本で始まらない理由は日本の著作権法にはフェアユース規定が無いからなのだそうです。
　これを聞いて「無いのだったら作ればいいじゃないか」と思うなら、それは立派な「フェアユース規定の創設を要望する理由」です。
　もう少し詳しく説明すると、現行の著作権法第1条が

　この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

と定めている「文化的所産の公正な利用に留意」と言う文言に根拠を求めて「現行法でもフェアユース的な運用は採り得る」と言う学説も存在します。しかし、過去の裁判ではこうした主張はことごとく否定されているうえに、水も漏らさぬレベルの権利強化が産業界や知的財産戦略推進事務局によって叫ばれ、矢継ぎ早に実行されているにも関わらず権利者が作品を囲い込むばかりで（例えば、映画の法人著作権が20年延長されたからと言って51～70年前に公開された全ての映画のうち現在でも容易に見られるのは何%でしょう?）強化された分に見合うだけの利便性の高いサービスを提供しないので結果的に、市場が先細りとなってしまう悪循環に陥りやすくなっているのです。特に、日本では明文のフェアユース規定が存在せず司法からもその存在を否定されているにも関わらず、権利の濫用を抑止する機能を果たすべき独占禁止法が第21条において

この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。

と、自らの手足を縛るが如き無用の規定（米国の反トラスト諸法やEUの競争法には、これに相当する規定は存在しない）を定めているために公正取引委員会による著作権が関係する分野への法律の執行は極めて萎縮的であり（2004年8月10日付政府答弁書ではこの見方を否定しているが、過去の事例を見る限り明らかに「萎縮的」と評せざるを得ない）、それが年を追って増長する一方の産業界による下請け事業者や一般の著作物利用者、流通に対する高圧的態度のバックボーンになっていると言う一面が存在します。

　フェアユース規定は、権利の濫用に対抗するだけでなく長期的には権利者の創意工夫を助ける規定でもあるのです。

　やや古い資料ですが、以下の解説で詳述されているので御一読をお薦めします。

藤本英介「ネット環境下の著作権と公正利用(フェアユース)」

　なお、2004年5月27日改訂の知的財産推進計画では以下の項目が追加されており、これが「フェアユース規定創設」に対応しています。

＜権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意する＞
　コンテンツの保護を強化する一方で、権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意することが必要であり、社会的に必要と考えられる公正な利用を促進する観点から、著作権法の「権利制限規定」の在り方について、2004年度に、検討を進める。（文部科学省）

【関連するエントリ】どうして? 日本だけ異様に厳しい「同一性保持権」
【関連するエントリ】CCCDは失敗だったのに──狭められる「私的複製」の範囲
【関連するエントリ】L.Lessig教授の講演（FLASHムービー）

【関連する記事】

posted by PublicComment at 00:00| Comment(21) | TrackBack(1) | 要望のテーマ |

この記事へのコメント

著作権法のフェアユース規定の創設について意見

　日本の著作権法には、特許法６９条に相当する「フェアユース」規定が条文化されていません。
　日本の知的財産法の「財産権」概念は、私的側面と社会的側面の２つの側面から構成されておらず、したがって、フェアユースつまり公正使用の規定を創設する必要性を認めないのではないか。
　米国では、知的財産概念をCommodityとPropriety（私的側面と社会的側面に相当）の２つの側面から捉える理論が、財産権論のバックボーンにあります。
　社会的側面は、社会法である独禁法存在の法理論的根拠であり、研究開発によって技術革新を促進するための技術方法を認める法理論的根拠も、実は、社会的側面にあるのです。
　この考え方は、米国のＧ.アレキサンダー、パメラ・サムエルソン、日本の末川博、川島武宜、丹宗昭信各教授によって整理された理論を基礎に、私が構築したものです。
　この論述を『知的財産の研究開発過程における競争法理の意義－知的財産権概念の私的側面と社会的側面』（2003年、国際書院）において、私は判例・学説を分析し行いました。
　ご参照ください。

２００４・１０・１５　　高橋明弘

Posted by 高橋明弘 at 2004年10月15日 01:30

Posted by adult amatuer women at 2006年10月03日 10:06

Posted by Stan Bauer at 2007年08月27日 15:12

noninterventionalist noncoagulability gauchely radiable cronian sextiply totalness grouseberry
<a href= http://212.ibdnkxoc.com/21-288.html >Taco Shell Maker</a>
http://89.ibdnkxoc.com/3-893.html
<a href= http://63.ibdnkxoc.com/1-754.html >La Vigna</a>
http://146.ibdnkxoc.com/62-452.html
<a href= http://196.ibdnkxoc.com/56-704.html >Usaf Hardbarger</a>
http://128.ibdnkxoc.com/32-527.html
<a href= http://244.ibdnkxoc.com/56-525.html >Extended Wear Contacts</a>
http://222.ibdnkxoc.com/13-272.html
<a href= http://174.ibdnkxoc.com/45-736.html >Willey Tropical Models</a>
http://205.ibdnkxoc.com/46-67.html

知的財産推進計画改訂のパブリックコメントを提出する

Posted by Edwina Jones at 2007年10月03日 16:15

noninterventionalist noncoagulability gauchely radiable cronian sextiply totalness grouseberry
<a href= http://bbumgmyy.info/29.html >Planet Halflife</a>
http://dyqowjdy.info/555.html

知的財産推進計画改訂のパブリックコメントを提出する

Posted by Aron Ayala at 2007年10月08日 21:50

noninterventionalist noncoagulability gauchely radiable cronian sextiply totalness grouseberry
<a href= http://ahksvvwy.info/17.html >17</a>
http://gbibpjai.info/82.html

知的財産推進計画改訂のパブリックコメントを提出する

Posted by Tobin Wynn at 2007年10月14日 04:34

noninterventionalist noncoagulability gauchely radiable cronian sextiply totalness grouseberry
<a href= http://eskldeuv.info/333.html >Bards Tale Ps2 Cheats</a>
http://xqvlxtzx.info/245.html

知的財産推進計画改訂のパブリックコメントを提出する

Posted by Romona Patrick at 2007年10月16日 04:40

Posted by Harrison Davidson at 2007年10月17日 07:37

Posted by Melvin Workman at 2007年10月18日 02:25

Posted by Collin Powers at 2007年10月20日 20:14

Posted by Katharine Rogers at 2007年10月21日 23:40

Posted by Jeannine Burch at 2007年10月24日 02:13

Posted by Mauricio Wong at 2007年10月27日 03:24

Posted by Michell Soto at 2007年10月27日 17:21

Posted by Cruz Carr at 2007年10月29日 05:25